よく子供が描きなぐったような絵だ、とその価値も知らずについ失礼なことを思ってしまうことがある「抽象画」。
私は絵を描くのが好きで、人の作品を見ることも好きですが、自分自身がどちらかといえば背景までしっかりと描く「写実的」な絵の描き方をしているせいか、それとは真逆に位置する「抽象画」に対する知識が圧倒的に欠けているのです。
抽象画の大御所だと勝手に思っていたピカソが、実は「キュビズム」の大御所であり、いわゆる抽象画の大御所は、オランダ生まれの画家、ピエト・モンドリアンであったことをつい最近まで全く知りませんでした。
モンドリアンはピカソのキュビズムをより発展させたと言われる画家で、「モノの形そのものこそが美しい」というコンセプトを持ち、1944年にアメリカで死去するまで様々な作品を創作。
そのモンドリアンの作品の一つ、「ニューヨークシティ」が、何と75年もの間「逆さま」に展示されていた!?という話題で今全世界を騒がせています。
本作品は、1941年に制作され、1945年に米ニューヨーク近代美術館(MoMA)で初展示、1980年からはドイツのデュッセルドルフで展示されていますが、学芸員のズザンネ・マイヤー=ブーシャ氏が今年、モンドリアンに関する新たな企画展のリサーチをしていて、長年の間違いに気づいたのだそうです。
作品は、青、黄色のテープで格子模様が描かれており、ブーシャ氏によれば「格子の線が密になっている部分は、暗い空のように、上にあるべきだ」と指摘しました。
彼女の説を裏付ける「証拠」も複数あることから、「どうやらこの作品は75年間上下逆さまで展示されていたようだ」との結論に達しそうです。
ただ、ブーシャ氏は同時に「いま作品を正しい向きに変えると損傷してしまう恐れがある」とも語っており、作品は今後も逆さのまま展示される予定だそうですよ。