音楽

「ビートルズは眠らない」を書いた音楽評論家・松村雄策氏死去

アラカン世代で洋楽にのめり込んでいた人たちならば、きっと知っているはずの雑誌が「ロッキング・オン」です。

まだネットが普及していなかった時代、音楽に関する情報は主にラジオか、「ロッキング・オン」あるいは「ミュージック・ライフ」のような雑誌から仕入れていたものです。

渋谷陽一氏が編集長を務める「ロッキング・オン」は、個人的に「硬派」なイメージがする音楽雑誌で、作品に対する評論も他と比べると理詰めでやや難しく感じたことを覚えています。

そんな「ロッキング・オン」を1970年代の初めに渋谷氏らと共に立ち上げたメンバーの一人が、松村雄策氏でした。

松村氏は音楽評論家として有名ですが、「苺畑の午前五時」という小説も書いており、文筆家としても定評ある方。

私の手元にある「ビートルズは眠らない」(小学館文庫)という著書を読むと、好きなものに対するまっすぐな情熱がすとんとこちらに届く平易な文章と、しかし実はその中にある種の「毒」が仕掛けられている・・・そんな独特の表現をとても面白く感じます。

とにかくビートルズが大好きな方で、同様に長年ビートルズファンを自認する自分からすると、この方は本当に神様のような存在でした。

前述の渋谷陽一氏とは「盟友」であり、長年ふたりによって行われ「ロッキング・オン」に掲載された「渋松対談」は、オオボケする渋谷さんに対し、冷めたツッコミを入れまくる松村さんの対比がとても面白く、この対談のファンも多かったですね。

その松村氏が3月12日に亡くなったというニュースを今日知り、思わず「うそっ!」と叫んでしまいました。

松村氏はまだ70歳。

亡くなるには早すぎますよ。

数年前に脳梗塞で倒れられ、その後は闘病生活が続いていたとのことですが、「これを見るまでは死ねない」と言っていた映画「ビートルズ/ゲット・バック(ルーフトップ・コンサート)」が公開されてからしばらくしての訃報でしたので、きっとこの作品を見て旅立たれたのだろうと、私は勝手に解釈しています。

渋谷陽一氏も自身のSNSで、「ロッキング・オンの50年は、僕たちの長い青春の50年でもある。松村は青春のまま人生を全うした。

ロッキング・オンを50年続けられたのは松村がいたからだ。本当にありがとう。安らかに眠ってくれ。」と、その胸の内を明かしています。

松村さん、そっちには松村さんが大好きだったアーティストたちがたくさんいますよね。

だから天国に行っても絶対退屈することはないと思います。

どうか、お気に入りのアーティストたちと語り合ったり、一緒にバンドをやったりして、楽しんでください。

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